計 器 配 列
各種計器を計器盤にいかに配列するかは、極めて重要な心理的問題である。
一般には次の様な原則を考慮するが、具体的には各航空機につき、それぞれ最も適した配列を行っている。
1 離着陸、定常水平飛行用計器は、操縦士に視線の近くに配列する。
  これ等の計器の中、中央に直線飛行の計器並びに旋回計を、その左右には水平飛行、上昇降下の基準計器を配列する。
2 同種の計器、例えば各種温度計のごときは接近して配列する。
3 互いに関係する計器は接近して配列する。
4 計器盤に対する計器の重量配分は均衡となるようにして計器全体の重心が計器盤の中心にくるようにする。
計器名 配列上の注意事項
羅針盤   定針儀との対照容易な位置に置く。
旋回計   直線飛行及び旋回の基準計器であるから中央に置く。
高度計   精密高度計は着陸用として使われるから、昇降計及び高度計との対照の容易な位置に置くこと。
また普通高度計は航法一般に使用されるからこれが便利な所に置く。 
速度計   これは重要な航法用計器にみならず、回転計、過給圧力計、昇降計と併せ水平飛行及び上昇降下の速度を示す計器であるから、
昇降計、高度計との対照最も容易な位置に置く。
昇降計   これは上昇降下の割合を示す計器であって、速度計、高度計との対照容易な位置に置く。
傾斜計   水平飛行の基準計器で、旋回の際に航空機のとるべき傾斜の量を正確に指示するため、旋回計と対照容易な位置に置く。
各種
針路指示器
  方向探知機、ラジオビーコン、盲目着陸用指示器は共に航空機の方向誘導に必要な計器であるから、羅針儀及び旋回計との対照
容易な位置に置く。
発動機用計器   発動機の状態を測知するに必要であるから、発動機の状態を監視するに便を考え順序正しく系統的に配列し、回転計過給圧力計は
速度計の故障の場合に代用を努めるものであるから、それを考慮して配列する。
時 計   対地速度測定及び航空機行動の基準となるもので、なるべく適当な所に置く。
外気温度計   凍結の予知、諸計器の校正、発動機の調整に必要である。
以上の注意を苦慮して最も適当な配列を行うべきである。 


独アスカニヤ社が提案した計器配列
時  :時計
羅  :羅針儀
高  :高度計
速  :速度計
航路:航路指示器
高  :精密高度計
昇  :昇降計
旋  :旋回計
燃圧:燃料圧力計
油量:燃料油量計
油温:滑油温度計
回  :回転計
油圧:滑油圧力計
開閉:電路開閉器
水温:水温計
航標:航路標定器
※ 小型機で計器の種類・数量の少ない時は良かったが、航空機が大型機化した場合
  まさに「
苦慮して最も適当な配列を行ったことと思われる。
「航空計測器」: 服部敏夫 著 昭和19年 参照


計 器 の 照 明
1 計器の照明は操縦士の眼を疲れさせないように間接照明する方法
  計器板の上に透明な板を付け、それを介して計器の照明としたもの。
  第2次大戦中の一部の航空機に採用され、現在の航空機まで採用し続けられている。
  欠点としては価格が高騰すること。
2 計器目盛の裏側に燐光物質を塗着する方法
  測定時の電球を瞬間的に点灯すると指針の影以外の所は発光するが、指針の所在部は暗く残ることから、
  その部分の目盛を読むことができる。
  この方法は採用されなかったようで、使用例を見ない。 
3 計器目盛に夜光塗料を塗着する方法
  
電灯または赤外線灯をあてることにより計器目盛自体を発光させ、看読することができる。
  一般的に多用された方法で、第2次大戦中多くの航空機に採用された。
 
夜 光 塗 料
1 蓄光夜光塗料
  これは日光・人工光線を受けて初めて光るものである。成分は次の二種類がある。
※ Zu,Cdの硫化物:緑色から暗赤色までの光を放ち発光時間は短い。
※ Ba,Ca等の硫化物:微量のCu,Bi,Mo,Mn等を加えることにより燐光を放つ。
  発光時間は上記より長いが吸湿性で分解し易く、日光のごとき紫外線を含む光線の照射を必要とする。
2 自発光夜光塗料
  これは放射性能物を含んでいて自ら発光するものである。成分は硫化亜鉛に放射性能物質を少量加えた
 もので、その放射するα線は硫化亜鉛の結晶格子に衝突・閃光し、それが集まって肉眼に光として感ずるも
 のである。発光寿命は放射性能物質により長短があるが、ラジウムなら10年、メソトリウムなら7年とされて
 いる。
  
航空計器用としてはラジウムを含んだものが一般に使用される。夜光塗料は明るい所では黄色であるか
 ら文字盤の表面は黒色に塗装してある。