調査資料(98式及び零式羅針儀)


 陸軍においては、98式羅針儀甲は小型飛行機の操縦席計器板に取付け、
98式羅針儀乙は操縦席計器板以外の所に取付けられた。そんな関係で、
海軍においても零式羅針儀1型は小型飛行機の操縦席計器板、零式羅針
儀2型はそれ以外の場所に取付けられたものと考えて差し支えないだろう。


98式羅針盤甲
会   社 東京航空計器 横河電気製作所 不 明
照 明 部 平ネジ 丸ネジ 平ネジ
前盆部 前 蓋 平ネジ 平ネジ 丸ネジ+照明部平ネジ
自差修正目盛 あり なし なし
誤差修正部 浮彫A 浮彫A 彫込A
羅針盤目盛
自差修正部 平ネジ 丸ネジ 丸ネジ
後盆部 後 蓋 幅 広 幅狭・幅広 幅 広
固定ネジ 平ネジ 丸ネジ 丸ネジ
制動液注入口 前 部 後部・前部 後 部
銘板部 銘 板 アルミ アルミ
固定ネジ 平ネジ 丸ネジ
そ の 他 製造過程が少し雑 普 通 丁 寧
現在までに98式羅針儀を製造した会社として上記以外に東京芝浦電気鰍確認している。


98式羅針盤乙
会   社 東京計器製作所? 東京計器製作所 東京航空計器
照 明 部 丸ネジ 平ネジ 平ネジ
前盆部 前 蓋 丸ネジ 平ネジ 平ネジ
自差修正目盛 なし あり
誤差修正部 塗装A 塗装A 塗装A
羅針盤目盛 切り抜き 切り抜き 切り抜き(簡素化)
自差修正部 平ネジ、NSEW省略 平ネジ
後盆部 後 蓋
固定ネジ 丸ネジ 丸ネジ 平ネジ
制動液注入口 上部後側左 上部前側左 上部前側左
銘板部 銘 板 アルミ シール
固定ネジ 丸ネジ なし
製造会社として東京計器製作所、東京航空計器、品川製作所を確認している。


98式羅針盤甲
横河電気    東京航空計器
初期生産型 後期生産型
※ 陸軍の航空機計器板をよく見ると、横河製タイプの羅針儀が多いことに気づく。
※ 前盆と磁差修正装置が分離したタイプが初期生産型のようだ。


98式羅針盤乙
東京計器製作所   東京航空計器
初期生産型 後期生産型 後期生産型
これも同様に右側の計器が多く使われている。
※ 写真を見てお解りのとおり、前盆と磁差修正装置が分離したタイプと前盆と磁差修正装置が一体化
  したタイプが存在する。
※ 前盆と磁差修正装置が分離したタイプが初期生産型のようだ。



零式航空羅針儀1型 東京航空計器 対比対象なし。
※ 昭和18年上旬: トラック・ラバウル方面部隊の「戦闘機用羅針儀不良」要請により、
 新型計器(羅針儀・回転計)携行し、現地へ
 専門家でないので良くはわからないが、「羅針儀不良」とは、日本は北半球、トラック
ラバイル方面は南半球であり、磁針方位角差修正ができず、誤った方向に飛んでしまい、
それが「羅針儀不良」と言うことではないのか。
 おそらく不良の計器とは「零式航空羅針儀1型」のことで、新型計器とは「零式航空針儀
1型改」または「零式航空羅針儀1型改1」のことだろう。
 自差修正装置ABCの修正ネジによる修正方法を改良(南半球での使用を可能にした。)
したのだろう。
1型及び同改を製造した会社として東京計器製作所、東京航空計器、横河電機製作所を確認している。


零式航空羅針儀2型 東京航空計器 比較対照なし。
零式航空羅針儀1型と異なり自差修正装置は上部に移動
98式羅針儀乙と異なり自差修正装置部と取付誤差修正部は同じ。
自差修正装置部は ○C ○A ○B の順に1型と同じ。
2型及び同改以降を製造した会社として東京航空計器、横河電機製作所を確認している。



98式羅針儀甲と零式羅針儀1型の比較

98式羅針儀甲 零式羅針儀1型
外 観 球型 缶詰型
レンズ部 丸み 角直角
共通部品 照明電球部及び同ネジ
後盆(ダイヤフラム格納カバ−)
計器板固定ネジ(雌側)4本
制動液注入ネジ
電灯ソケット部
全面レンズ枠固定ネジ(平ネジ)
非共通部品 丸ネジ 平ネジ
自差修正装置部と取付誤差修正部は別 自差修正装置部と取付誤差修正部は同じ。