海軍 18試局地戦闘機「震電」のコックピットを復元する。


震電計器パネル
新発見! 震電実用試験時の計器板(杉山氏からの情報提供により制作)
 杉山氏の情報提供により制作した実用試験時の震電の計器板
である。
 この写真は某オークションにかけられていたものだが、杉山氏は
落札することはできなかったそうである。
 この写真資料に基づき震電の計器板を復元する。
 実用試験の段階では、空技術廠15試圧温計を除き、他の計器
類は、その当時の実用機が使用していた一般的な計器であること
が判る。

 F空技術廠15試圧温計の下にM2号耐寒油圧計があるが、
15試圧温計下段の双針は2号耐寒油圧計と同じ目盛である。
 そのことから15試圧温計が機能していたかについては疑問が
残る。
 また、仮称3式定針儀・仮称3式水平儀・仮称3式旋回計・仮称
酸素調圧器が実用段階にあったのかも疑わしい。
 以下、この写真からの復元と取扱説明書及び現存する計器板
からそれぞれ想像したものを紹介する。
 
新発見に基づく震電計器板配置図
No. 計 器 名 備 考
前後傾斜計2型 -
旋回計2型 -
水平儀1型 -
圧力計4型 -
電路接断器
脚標示灯1号 -
空技術廠15試圧温計 3針
1号電圧回転計 -
1号吸入圧力計2型 -
10 速度計3型改2 -
11 精密高度計2型改1 -
12 昇降計1型 -
13 燃料計 -
14 2号耐寒油圧計 双針
15 1号シリンダー温度計1型 -
16 零式航空羅新儀1型改1 -
17 燃料選択器 -
18 警告灯? -
19 1号排気温度計1型 -
20 酸素調圧器2型 -
21 レバー 不明
22 スイッチ 不明
CG 新発見に基づく震電計器板
CG 震電コックピット(未完成)
2011年4月6日
震電取扱説明書による計器板
震電計器板配置図
No. 計 器 名 備 考
仮称3式定針儀 未見
0式航空羅新儀1型改1 -
仮称3式水平儀 未見
真空計(増槽燃料計?) -
1号油圧計4型(メタノール圧力計) 単針
1号速度計3型改2 -
空技術廠15試圧温計 -
1号電圧回転計 -
1号吸入圧力計4型 -
10 仮称3式旋回計 -
11 精密高度計1型改1 -
12 昇降計2型 -
13 燃料計 -
14 流体接手圧力計 -
15 1号シリンダー温度計1型 -
16 脚標示灯 -
17 前後傾斜計2型 -
18 警告灯? -
19 1号排気温度計1型 -
20 仮称酸素調圧器 未見
仮称3式水平儀を復元(想像)
ドイツ 水平儀 陸軍 4式人工水準器 海軍 水平儀2型 海軍 仮称3式水平儀(想像)
ドイツ 水平儀 陸軍 4式人工水準器 海軍 水平儀2型 海軍 仮称3式水平儀(想像)
※ 仮称3式水平儀は未見の計器ではあるが同様の型式をもつ陸軍の4式人工水準器を参考し海軍風にアレンジしたもの。
   本来この計器は、ドイツから入手したFW190等に取付けられていた計器で、それを参考に東京航空計器が製作したものと考えている。
※ 計器の縁を矢印の方向に回す事により開:指針解放、閉:指針固定する方法はドイツ水平儀と同様の方法である。
※ 陸軍の4式人工水準器の下部にあるノブで解放・固定を行っていたようであるが、ドイツの水平儀にはそれがない。
  陸軍4式、海軍3式の名称から海軍が1年早く採用したようである。そのため仮称3式水平儀をCG化した時はノブを付けなかった。
 @ 現存する震電の計器板  A 実用試験時の想像図
震電計器板実物写真 震電 計器板 実用試験時 (想像)
 ※ 飛ばそうとしたのだろうか随所に米軍仕様の計器(a〜f)が取り付けられている。
 ※ 左上部の四角い穴、ここは定針儀を取付ける場所であるが、計器自体が入手できなかったのか実用試験当初から塞がれていたようである。
 ※ 右上部の四隅を切り取った正方形の所には仮称3式水平儀が取り付けられていたようである。
 ※ 写真中央右の丸い穴は荷重計を取り付けていた跡で、後日除かれ前後傾斜計と入換えられている。
 ※ @の左上部の縦長の四角い穴は大きさ形状が前後傾斜計と合うため、実用試験間は、この位置に前後傾斜計を取付けていた考えられる。
 ※ Aは@と取扱説明書による計器配置等を考慮し実用試験時の計器板を再現したものである。
 ※ 電路接断器が見あたらない。これはどこに設置されていたのだろう。
B 計器板の計器取付穴(空洞)を基にした想像図 C 実用段階の計器板想像図
震電 計器板 計器板を基準にした場合(想像) 震電 計器板 実用段階時(想像)
実用試験時の計器板については、新発見の項参照
 ※ 計器上段の仮称3式定針儀と仮称3式水平儀を取り付ける空洞に
  ピタリ合うのは1式自動操縦装置の定針儀と水平儀が合致するが、
  自動操縦装置を付ける必要も予定もないので、その計器板はボツ。  
 ※ 3式水平儀は存在する計器、未見ではあるが仮称3式定針儀も
  存在したと考えると、この計器板が実用機となりえた可能性が高い。  
 ※ 想像図では仮称3式定針儀は未見のため、定針儀1型を取り付けた。
  通常の場合、指針部(上部の円)と下部のノブだけが計器板から見える
  よになっている。
コックピット右側 コックピット左側
震電 コックピット 右側(想像) 震電 コックピット 左側(想像)
3式空1号無線電話機 上左:コックピット右側
 右側には無線機等の器材が配置されている。
 上段:3式空1号無線電話機
 中段:前から自動消火装置、消火レバー、主電源装置
 下段:主電源装置の下に試製戦闘機用4発投下管制器が配置されていたものと推測した。
 実用試験時には主電源装置以外の機器は除かれていた可能性が非常に高い。
上右:コックピット左側
※ 圧力計付の装置については用途等は不明である。
※ 発射切換(下方2丁または4丁同時発射)は、現物が損傷しているため形状等は不明である。
   零戦と同様に紋弁握手の頭頂部に付いているスライドスイッチにより選択していたものと思われる。
左:3式空1号無線電話機
1/32ボークス 製「震電」には大変興味がある。模型で作っている主電源装置等の機器の根拠は何か知りたい所ではあるがそれを知ることはできない。
ご存じの方がおられたらお教え願いたい。
2010年4月28日 70%程完成
参考資料
 1 世界の傑作機「震電」 文林堂
 2 Japanese aircraft interiors 1940-1945 Robert C.Mikesh
 3 website「船津航空計器博物館」他
 4 杉山氏提供資料 

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